アミノ酸でオーバートレーニングを防ぐ

 

人間はたんぱく質を摂取すると、20種類のアミノ酸に分解される。その中で、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分類される。筋たんぱく質合成を促すのは主に必須アミノ酸である。

必須アミノ酸を摂取することによって、筋たんぱく質合成を促し、同時に筋たんぱく質分解も抑制する。なんともありがたいエルゴジェニックエイドであり、トレーニーではポピュラーなサプリメントである。

前回紹介した『オーバーリーチングで1RMを飛躍的に向上させる』の記事について、今回はアミノ酸摂取について着目してみよう。

前回のプロトコルは、1週間に4日連続でレジスタンストレーニングを行い、それを4週間続けたハードなトレーニングであった。アミノ酸摂取群には1日に0.4g/kgの必須アミノ酸を摂取させ、プラセボ群にはセルロースを摂取させた。プラセボ(偽物)群は、2週目で一時的に筋力が大きく低下して、そのリバウンド効果によって3週目、4週目で筋力が飛躍的に増加したという結果であった。一方、アミノ酸摂取群では2週目での筋力は低下せず維持され、3週目、4週目ではプラセボ群と同様に筋力が飛躍的に増加した。概略図は、下の通りとなっている。

アミノ酸摂取群の筋力が低下しなかった理由は、最初に述べたアミノ酸による筋たんぱく質合成の促進筋たんぱく質分解の抑制である。この実験では被験者の血液も採取しており、低下しなかった理由を生理的な指標を用いて実証することができた。

まず結果を述べる。アミノ摂取群は、2週目の血清クレアチンキナーゼ濃度がプラセボ群よりも低い結果となった。また、2週目、3週目、4週目のテストステロン濃度ではアミノ酸摂取群の方が大きいことがわかった。

クレアチンキナーゼは、筋損傷マーカーの指標とされている。つまり、2週目においてアミノ酸摂取群の方がクレアチンキナーゼが低いため、筋損傷の度合いが低いのである。

テストステロンは男性ホルモンの一種であり、筋量が増えるホルモンだ。アミノ酸摂取群はプラセボ群よりも筋たんぱく質の合成が促進されているのである。

これらの結果からアミノ酸を摂取することで、筋力の低下を防ぐことができた。オーバートレーニングは、回復しないまま過度なトレーニングを繰り返すことによってパフォーマンスが慢性的に低下することである。アミノ酸を摂取することでオーバートレーニングに陥るリスクを減らすことができる。なおかつ、強度・ボリュームを大きくしても耐えられる可能性が考えられる。

 

この研究を現場において考える。

パワーリフティングの選手では、ベンチプレスを週に4回、5回実施する者が多い。2日連続でベンチプレスを行うことは珍しくない。それは、できるだけ重い重量を高頻度で持ちたいからである(かもしれない)。そのような選手にとってアミノ酸は、重要なサプリメントである。また球技などの競技でも、練習は高頻度で行われ同じ部位の筋を酷使し続けるため、アミノ酸摂取の重要性は非常に高い。

アミノ酸は、筋肥大の面で大きく注目をされているが、このようにコンディショニングの面でも役立つことを理解すべきであろう。

 

P.S アミノ酸のサプリメントでなくても、プロテインドリンクをしっかり飲むことで同じような効果が得られます。

 

William J. Kraemer, Nicholas A. Ratamess, Jeff S. Volek, Keijo H7kkinen, Martyn R. Rubin, Duncan N. French, Ana L. Go ́mez, Michael R. McGuigan, Timothy P. Scheett, Robert U. Newton, Barry A. Spiering,Mikel Izquierdo, Francesco S. Dioguardi. The effects of amino acid supplementation on hormonal responses to resistance training overreaching. Metabolism Clinical and Experimental 55 (2006) 282–291