ディトレーニングでプラトーを打破する

 

 日々鍛錬に励む皆さんは、トレーニングの効果が停滞(プラトー)した時、その状況を打破するために、あえて一時的にディトレーニング(トレーニングを休む)を挟むという方法を聞いたことはないだろうか。

 一般的に、ディトレーニングは鍛錬者に対して速筋線維の大きな萎縮をもたらし、同時に筋力も低下させることが明らかになっている。

 果たして一時的にディトレーニングを挟むことは、トレーニングの効果を引き上げるために有効なのだろうか。

 そこで、今回紹介させていただく論文は、継続的に行うトレーニングとディトレーニングを組み込んだトレーニングとで比較をし、どのような適応がみられるかを調査した研究である。

 

被験者

 14人の若齢男性(トレーニング未経験者or 本研究から最低2年定期的なトレーニングを実践していない者)

 

方法

 継続的に24週間トレーニングを行う(CTR)群と6週間のトレーニング後に3週間のディトレーニング(トレーニングを休止)を繰り返す(PTR)群の2群に分類して比較をした。

つまり、CTR群は24週間続けてトレーニングを行ったのにも関わらず、PTR群は計18週間のトレーニングと計6週間のディトレーニングを挟んで行ったのだ。

 

トレーニング内容

75%1RMのベンチプレスを10回3セット、週3回の頻度で行った。

 

結果

最初の6週

 筋横断面積と筋力の増加は両群ともに同様であった。

6週→24週

 CTR群はその後、筋横断面積と筋力の増加率が徐々に減少していった。

つまり、トレーニング期間後半になるにつれて、トレーニング効果が少しずつ小さくなってしまったのだ。

 PTR群は、3週間のディトレーニングによって筋横断面積と筋力は減少してしまうが、 (9-15週)(18-24週)の筋横断面積と筋力の増加率は、最初の6週間(0-6週)のトレーニングで得た効果と同等であった。

つまり、ディトレーニングを挟むことによってトレーニング初期で得た同等のトレーニング効果が得られたのだ。

 

 トレーニング期間全体(24週間)を通しての筋横断面積と筋力の増加幅は、CTR群とPTR群で有意な差はなかった。

 

 

結論

 3週間のディトレーニングと6週間のリトレーニングを繰り返すトレーニングサイクルは、継続的に24週間実施するトレーニングと同様に筋横断面積と筋力を増加させる。

 

 

まとめ

 一時的にディトレーニングを挟むことで、ゆるやかになった筋力増加の傾きを再度上げられることがわかりました。これは、鍛錬者においてもプラトーを打破する1つのヒントとなり、現場にフィードバックする情報として、かなり有効的であると思います。

 今回の実験では、PTR群はたった18週間のトレーニングしか行っていないので、24週間行ったCTR群よりも効率の良いトレーニングができたということになります。トレーニング期間とディトレーニング期間を適切に設定することができれば、さらに良い結果が出たかもしれませんね。

 やはり最適なトレーニングを計画するには、同じ刺激に慣れないように、強度や頻度、ボリュームなどの変数を定期的に変えてあげることが、トレーニング効果を引き上げる、もしくはプラトーを打破するために必要だと思います。

 あと、この現象についてのメカニズムにも個人的には気になりますね。さらなる研究に期待です。

 

 

Ogasawara R, Yasuda T, Ishii N, Abe T. Comparison of muscle hypertrophy following 6-month of continuous and periodic strength training. Eur J Appl Physiol 113: 975–985, 2013.