トップリフターのベンチプレスを科学的にみる
ベンチプレスは、ウエイトトレーニングの中で最もポピュラーな種目と言っても過言ではない。
ジムの中で見知らぬ者が現れた場合、トレーニングレベルをベンチプレスの重量で推測することは誰もが行う方法ではないだろうか。(筆者の勝手な自論)
力の象徴でもあるベンチプレス。誰もが強くなりたいと思っているはず。
しかし、強くなるためにはどのようにして挙げれば良いのであろうか。強い人達の動画を見ても改善点が分からないのがほとんどの意見である。なぜなら、フォームを真似てもどの筋肉を使って、どのように連動しているのかなんて分からないからだ。
そこで、今回紹介する文献はナショナルレベルのトップリフターにベンチプレスを試技させ、筋電図を用いて筋肉の活動を観察した研究である。
実験は、デンマークのエリート選手10人と未経験者9人で比較をした。上級者:3RMが163.0 ± 19.9 kg 、Wilks points(フォーミュラー値) 143.3 ±18.5.
方法は、3RM(3回限界挙上重量)の60%で8回3セットを行い、その時の筋活動を観察した。
結果・考察
・エリート選手は、外側広筋の活動の類似性がみられた。
→外側広筋が活動することで膝が伸展され、下肢が垂直に押されるようになる。これは、胴体(体幹)の安定性と剛体化を向上させて、より強い力を発生させるためであると考えられる。
・未経験者では三角筋前部の活動が大きかった。
→上級者はベンチ台にアーチ状に組んだのに対して、初級者は平行に組み、足も地面に緩ませていたからであろう。
・上級者の中でバーベルを挙げる時の筋肉の連動性が個人個人で異なることがわかった。
→つまり、人によって挙げ方が違うことがわかった。おそらく上級者では、長年トレーニングを行うことで自分の身体的特徴(手の長さなど)や筋肉の構造に合うようなフォームに調整されたのではないかと考えられる。自分にとっての効率的な活動パターンを時間をかけて創作することで、高い力発揮を生み出しているのではないかと考えられる。
結論
・上級者は、胴体(体幹)を安定させて、かつ剛体化するために外側広筋を活動させている。
・初級者はベンチ台に対して、平行に寝て、足も緩ませて置いているために三角筋前部の動員が多くなってしまっている。
・上級者の中でも筋の連動性が個人個人で異なる。つまり、ベンチプレスの最適なフォームの答えは一つではない。
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M. Kristiansen, P. Madeleine, E. A. Hansen, A. Samani Inter-subject variability of muscle synergies during bench press in power lifters and untrained individuals Scand J Med Sci Sports 2015: 25: 89–97 doi: 10.1111/sms.12167