腹圧について
高重量のスクワットやデッドリフトを行う時、腹圧を高めることによって腰椎の怪我を防止できることは周知の事実である。トレーニング熟練者は、腹圧の高め方を感覚的に習得しているが、果たして実際にどのようなメカニズムで腹圧が高まっているのであろうか。
横隔膜の下部にある腹部の内腔を腹腔と呼ぶ。この腹腔には液体成分が多く、わずかしか気体が存在しないため圧縮率が低く、横隔膜と体幹の深層筋が収縮すると腹腔内圧が上昇する仕組みとなっている。それによって、トレーニングで生じる椎間板への圧縮力を大幅に減少することができるというメカニズムだ。
参照画像: https://ja.wokipedia.org/wiki/腹圧
また、腹腔内圧を高める方法としてバルサルバ法(効果)というものがある。
バルサルバ法とは、声門を閉じて空気を閉じ込めることで腹部や胸郭部の筋を収縮させ、腹腔内圧を高める方法である。これは、パワーリフティングやウエイトリフティングの選手がよく行う方法である。しかし、この方法は血圧が上昇するという点でデメリットがあるため、スクワットやデッドリフトなど椎間板に大きな圧縮力が生じる種目に対して処方することが勧められている。
また、トレーニングベルトの使用によっても腹腔内圧を高められることが文献によって証明されている。さらに、それよってバーベルの挙上速度が増加したという報告もある。このようにベルトの使用は、怪我の防止だけでなくパフォーマンスにも効果があるようだ。
椎間板への圧縮力が大きくかかる種目では、これらの方法を複合的に用いることで怪我を防止することができ、さらに高いトレーニング効果も見込まれるのでうまく活用するのはいかがだろうか。
参考文献: Essentials Strength training and Conditioning2010 Thomas R.Baechle / Roger W.Ear