記事のアーカイブ

代償性肥大した筋肉は特性が変わるのか?

  前回の続きである。(肥大した筋肉は特性が変わるのか?) 春日らが行った動物実験では、ジャンプトレーニング(JT)群と持久性トレーニング(IST)群、ヒラメ筋の協働筋を切除した代償性肥大(TT)群を設けた。介入後、肥大の増加率はJT群+136.8%、IST群+117.3%、TT群+158.9%であり、TT群の代償性肥大による顕著な増加が見られた。 前回では、トレーニングによって肥大した筋の機能特性は変わらないことを紹介した。 しかし、代償性肥大による最大発揮張力(N/cm2)は、5週目では変わらないが1週目、3週目では低く示された。つまり、代償性肥大による初期の急性肥大は
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肥大した筋肉は特性が変わるのか?

  筋トレをすると使えない筋肉ができてしまうという風潮がある。筋トレをすると脱力が必要な動作がやや困難になったりすることもある。動きについてのデメリットはポピュラーであるが、筋の特性は肥大することで変わってしまうのだろうか? 春日らが行った動物実験では、ジャンプトレーニング(JT)群と持久性トレーニング(IST)群、コントロール(C)群にそれぞれ振り分けトレーニングを実施した。その結果、筋の肥大率はJT群>IST群>C群の順で有意な増加がみられた。 断面積あたりの最大発揮張力(N/cm2)や短縮速度、Ca2+感受性では、どの群も差がなかった。つまり、スポーツなどの活動によ
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ニコチンはパフォーマンスに悪か?

ニコチンは、タバコ葉内にリンゴ酸塩、またはクエン酸塩として存在する。タバコを習慣的に吸い続けると、心臓病や肺癌を起こすリスクが高くなる。ニコチンは、一般的に害とされているが、作用をみると運動パフォーマンスにプラスな影響を与える可能性を秘めている。ニコチンは、興奮剤に分類される薬物だ。ニコチンは主に中枢神経および末梢に存在するニコチン性アセチルコリン受容体 (nAChR)...
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プレッシャーを科学的に考える

競技や日常において、我々は常にプレッシャーと戦っている。得点圏での打席、ボーリングの10フレーム、物音を立てられない場所でペン回しを遂行するなど、このような場面でパフォーマンスが低下することを誰もが経験しているはずだ。 プレッシャーとは、主に恐怖や不安の状態を表す。ある実験では、被験者にゴルフのパッティングをさせたところ心拍数が約10bpm増加したようだ。これは、プレッシャー(あがり)によって覚醒水準が上昇したことを表す。それによって運動の変位と速度の低下がみられ、パフォーマンスも低下したようだ。 一方で、筋電図を用いて行った実験では、プレッシャー条件において筋収縮が増加したことを報告している
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アミノ酸でオーバートレーニングを防ぐ

  人間はたんぱく質を摂取すると、20種類のアミノ酸に分解される。その中で、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分類される。筋たんぱく質合成を促すのは主に必須アミノ酸である。 必須アミノ酸を摂取することによって、筋たんぱく質合成を促し、同時に筋たんぱく質分解も抑制する。なんともありがたいエルゴジェニックエイドであり、トレーニーではポピュラーなサプリメントである。 前回紹介した『オーバーリーチングで1RMを飛躍的に向上させる』の記事について、今回はアミノ酸摂取について着目してみよう。 前回のプロトコルは、1週間に4日連続でレジスタンストレーニングを行い、それを4週間続けたハードなトレーニン
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パワーリフターとボディービルダーの筋の違い

筋トレによって、筋持久力が低くなってしまうのではないかという恐れを抱いているアスリートは多いはずだ。筋の毛細血管密度はパワーリフターよりボディービルダーの方が高いことがわかっている。 毛細血管は筋持久力に大きく関わっており、筋への酸素の供給や乳酸や熱の除去に大きく貢献している。ボディービルダーのような乳酸濃度を高くするトレーニング、つまり10RMベース(または10回以上で限界まで行う)のトレーニングを中心に行うことで毛細血管密度は筋肥大しても保たれるのだ。 筋持久力も必要なアスリート(ラグビーやサッカーなど)は、これらを考慮した上でプログラムを組む必要があるのではないかと考えられる。
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骨密度は力学的環境に大きく影響される。

『骨密度は力学的環境に大きく影響される。』 スポーツ競技で比較した研究ではウエイトリフティングやボディビル、テニスやバスケットが競泳やサイクリストなどよりも骨密度が高いことがわかっている。 重いバーベルを扱って強い筋力発揮を行う、または素早い切り返し動作を行うことによっても骨密度の増加が起きる。しかし、素早い切り返し動作では、腱や靭帯などの結合組織の故障リスクが高くなってしまうことが弱点だ。 骨密度を増加させる手段として、ウエイトトレーニングは安全でかつ効率が良いのである。
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オーバーリーチングで1RMを飛躍的に向上させる

  今回紹介する文献は、戦略的にオーバーリーチング(一時的な1RMの低下)を生じさせてベンチプレスやスクワットの1RMを増加させた研究だ。この研究の目的は、アミノ酸を摂取することで運動パフォーマンスや血液指標にどのような影響を及ぼすかについて検討したものであるが、今回はトレーニングプロトコルに着目して紹介する。 オーバーリーチング・・・オーバートレーニングの手前のことで一時的にパフォーマンスの低下が起きたことを示す。   まず結果から言おう。 どちらも4週間のオーバーリーチングをさせたトレーニングで、 アミノ酸摂取群:ベンチプレス 108.6±17.
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減量(水抜き):大島逸生

  どうも、まずは私の試合数日前に行う減量のテクニックから紹介させて頂きます。 上級というほどではないですが、私は毎回この方法を行うことによって他者との差をつけます。     ここで説明される減量方法は「脱水」です。 なぜ、脱水による減量方法を行うかというと、私の競技は階級制で規定された時間にその体重をクリアしていれば、OKという競技だからです。 一時的に水分を減らし、クリアすれば水分を戻して他者よりも重たい体重で戦うことがメリットです。 スポンジと同じです。水の含んだスポンジを絞って再び水を入れるような感じです。   また、他のメリットとして ①元の
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高強度(3RM) vs中強度(10RM)、仕事量を同量にしてみた

  3RM(限界回数)のような高重量は、神経系を改善させる(筋力を上げる)方法の一つで、あまり筋肥大しないと思っている者が多いであろう。低回数だと乳酸もたまりにくいし、あまり筋肉が大きくなるようなイメージは湧かない。一方で、パワーリフターやウエイトリフターは低回数のトレーニングを中心に行う人が多いが、実際にその人達の身体はどうだ?と聞かれるとけっこうゴツイ。   写真は、BIG3のトータルが1000kgを超えるトップリフターのレイ.ウィリアムスである。   実は3RMのような低回数のトレーニングでも、ある程度セット数をこなすと10RMで行うトレーニングと同等くら
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